湘南アウトリガーカヌークラブ “Hawaiki Nui Va’a 2024” レポート!

小林 俊 | Shun Kobayashi

夢の様な3日間だった…。

レースが終わり、振り返るのが少し遅くなったが、思い出せば思い出すほど夢の様だった…。

アウトリガーカヌー(va’a)に出会い20年余り、そして今回参加した「ハワイキ・ヌイ・ヴァア」は数年前のTVでの特集で知った。普段は、TVのモニターにはまず映ることの無いマイナー競技のカヌーが、Tahitiの文化と共に“世界で最も過酷で、最も美しいレース”と紹介された。いつかは行ってみたい! 漕いでみたいと思っていたレースだ。我々湘南アウトリガーカヌークラブのメンバーも今年こそ! と腹を決め、半ば無謀とも思われた挑戦だった。

レースは、出発の空港からの珍道中であったがそれは省くことにしよう、、、

レースの3日前にタヒチ入りした我々は、憧れの Shell Va’a の基地などを見学。時差ボケなどを調整し、レースのスタート地点であるフアヒネ島へと渡った。

このレースは1995年から歴史があり、フレンチポリネシア領のメイン島であるタヒチ島ではなく、さらに飛行機で渡った フアヒネ島 ― ライアテア島 ― タハア島 ― ボラボラ島 の4つの島を3日間かけて渡る総距離135キロにもおよぶ壮大なレースだ。

フアヒネ島に到着。タヒチが初めてのメンバーも多く、それでいてフアヒネ島の雰囲気にメンバーは感激の連続であった。フアヒネ島の空港はそれほど大きくはないが、来る人をもてなしてくれる島の植物の装飾が至る所に施されているのが印象的だ。空港では今回のレースでは欠かす事のできない Jonathan Utia が出迎えてくれた、2019年の世界大会以来の再会だ―― 感激!

空港からは、大会側が用意してくれた豪華なタクシーがお出迎え! これまたメンバーはテンションが上がる!!
ジャングル? を抜け大会の会場へ、写真集で見た光景が広がるフアヒネ島は緑が濃く、モアナの世界に入ったようで、ここからが夢の始まりだ!

レース前日に到着した我々は、カヌーの準備。エントリー。寝床の準備。食事に買い物……。
おまけにレース前日はレースのセレモニーもあり、大忙し!

静かなフアヒネ島の小さな町が、1年で1番賑やかになる日だった。

各々役割をこなし、明日のレースに備えるが、見るもの全てが新鮮で興奮冷めやらぬまま寝床についた。

レース1日目。初日はここフアヒネ島より西へ50km、はるか向こうにライアテ島が見える。現地コーチの Jonathan の指示に従い、ラインアナップ! スタートラインまでは、これから50km漕ぐというのに2km先、周りは、Shall Va’a, OPT, AIR TAHITINUI と豪華チームのメンバーが、カヌーを矢のように走らせる! これまた感激!

カヌーのレースには慣れたものだが、ここでも同じ。スタート前からラインを超え前へ前へ、フォーンと共にこれから50km? というスピードで彼らはスタートダッシュをみせる。我々は、タヒチアンに惑わされることなく、冷静に… ライアテア島を目指した。
初めてのMATAHINA。初めてのレース。初めての海。不思議とカヌーは今までにないぐらい気持ちよく走ってくれた! Jonathan の細かな指示、エスコートボートからの応援、サポートを受け、無事ライアテア島にゴール! あの VIPERVA’A の生まれ故郷のライアテア島だ。

とにかく1日目を無事に渡り切れたことが嬉しかった! 自信にもつながった。メンバーの1人があんなにもキツかったはずなのに「チョー楽しかった〜!!」とゴールの瞬間叫んでいたのが忘れられない。

レースは終わったが旅は終わらない、初上陸のライアテア島で今日の寝床はどこへやら… 本日も小学校の教室のようだ。フアヒネ島でも小学校の各教室がそれぞれのチームに割り振られたが、このレースの時期は、子供も大人もお休みでレースの準備、食事など島を上げて協力しているようだ。ここでは、他のチームとはパーテーションで仕切られ、2段ベットが用意されていた。学校の花壇は古びたカヌーを再利用、さすがカヌーの国タヒチ! 水のシャワーを浴び、食事。そして昼寝(休養)。とにかく休む、明日も30kmのレースだ!

レース2日目。本日はライアテア島 ― タハア島の30km。タヒチアンは、この2日目をスプリントセッションと呼ぶ…

これから30km漕ぐと言うのにアップが念入りだ… そして速い…!

風は後ろからいい感じに吹いており、漕ぐには最高の条件だ。我々も昨日のレースで少し感覚が麻痺したか、「今日は30kmか―」と少し気が楽だった。

スタートと共にダウンウィンドのコースは漕げば漕ぐだけ波に乗り、少し調子に乗ったか、疲労も早くペースダウン… カヌーの艇数以上にエスコートボートの数も半端ない、このセクション。後方の我々には容赦無く引き波が襲いかかる! スピードを緩めると余計に危険だ! タハア島ゴール!

最後は、ニューカレドニアのチームとデットヒート。前でも後ろでも、デットヒートは盛り上がる! ここタハア島も、観光ではまず訪れることのない島だろう。しかしゴール地点の盛り上がりは素晴らしく、我々を迎えてくれた。

本日の寝床は、素敵な空き家を我々のチームに貸してくれた。夜の食事も素敵な手作りレストランで、現地の子どもたちの歌声を楽しみながらのディナーとなった。レースのことも忘れてしまうひと時だった。明日は60kmだ……。

ようやく明日は最終日。最終地点のボラボラ島。2日間の疲労と60kmへの緊張感が夜から続いた―。

レース3日目。素敵な時間が流れるタハア島ともお別れし、よーいドン! でボラボラ島を目指す! とにかく前にカヌーを進めることに全員が集中した。5時間があっと言う間に過ぎた。そして不思議と身体は動きカヌーも走る。日本での練習。1日目、2日目のレースと比べても、これ以上にないほどカヌーを気持ちよく走らせることができた。6人全員が感じたはずだ! ボラボラ島にさしかかると水上コテージ。真っ青なラグーン。まるで絵葉書で見るような海を駆け抜け、ゴールを目指す! ラスト30分は向かい風だったが、ここまでくればと渾身の力を振り絞る。

ボラボラ島ゴーーーール! 私が最初に思ったのは「着いた… 良かった…!」素直にそんな感想だった。はじめての海峡で、本当に60kmを漕ぎ切ることができるのか? と半信半疑だったのは自分だけではないはずだ。ゴールは水上のお祭り!? 騒ぎだ!! ここはどこなんだ!? と言う様な光景だ! 色々な海へ行ったことがあるが、この光景は初めてだ。

ジャポネ! ジャポネ! と声をかけられ、まるでウイニングランの様にボートの合間を縫ってみんなの元へ! ここまで辿り着くまで本当に色々あったが、とにかくゴールすることができホッとした。

気持ちよく送り出してくれた日本の関係者の皆さま。家族。応援に駆けつけてくれたメンバーに感謝! そしてタヒチアンのホスピタリティーにも感無量でした! 日本からカヌーを漕ぎに来たのか? 日本にはカヌーがあるのか? お前ら本当に漕げるのか? 現地ではそんな印象の我々だったが、見事ゴールした我々に、現地の方もリスペクトを示してくれた―。

ゴールというより「辿り着く!」の表現の方が合っている。我々が日本で毎週漕いでいる「カヌーの原点」が見えた気がした。カヌーが「島渡りの道具」であることは知っていたが、改めて実感することができた。そして、その「島渡りの道具」は便利で忙しい現代社会にさまざまなことを教えてくれることも再認識することができた。

素晴らしい、夢のような3日間。無事、ボラボラ島に辿り着くことに集中させてくれた環境に感謝!!

本当に何から何まで素晴らしいレースだった。全てが完璧だったと思う。

「世界で最も美しく、もっとも過酷なレース!」を体現することができた3日間だった!

日本の次世代パドラーには、いつかこのレースのクルーとなって、タヒチアンとカヌーを並走させてレースができるように――。
引き続き、日本での益々のアウトリガーカヌーの普及と発展・向上に尽力していきます。

湘南アウトリガーカヌークラブ
Hawiiki Nui Va’a 2024 TEAM SOCC JAPAN CREW

小林  俊
レポート書かせていただきました。

山本 文弘
その存在を知ってからいつかは出たいと思っていたレースでした。「偉大な桃源郷」という名の4つの島々を渡る3日間のロングレース、参戦すると決めたその日から漕げる日はほぼ毎日海にでました。レースの日、自分の中ではしっかりとトレーニングをやり切った感覚はありました。それでも漕ぎ切れるのか?という体力への不安は3日目のレース終盤まで続きました。そしてついにボラボラ島のゴールに近づいたときこれまでの日々の感情と相まって一生忘れられない情景となりました。
最後に応援してくれたすべてのみなさまに感謝します。

植田 央
滞在期間、またレースを通じて多くの事を学ぶことができました。レースでは、日に日に6人とヴァアが一体になって進んでいく感覚が良くなり、疲労を忘れてみんな最高のパフォーマンスができたと思っています。また、タヒチアンのパドル、ヴァア、自身のチームに対する熱い想いを体感する事ができ、感動しました。
こんな貴重な体験・チャレンジする機会を与えてくれたクラブ、応援してくれたメンバーの皆さん、家族、チームメイト、ジョナトンとファミリーに感謝いたします。

植田 晃輔
カヌーの世界に飛び込んで本当に良かったと思える最高の3日間。何から何まで日本とは違う海やタヒチ・他のチームの人の温かさに感動しました。そんな環境だからこそ3日間漕ぎ、 日々成長を実感し、とにかく楽しかった素晴らしいレースでした。カヌーに誘ってもらえて、やっててよかった(笑)最終日、BoraBora島にゴールした時の言葉に表すことのできない感情になりました。
このチームとサポートしてくださったすべての方がいたからこそ漕ぎることができたと思います。ありがとうございました。

内田 陽太郎
初の海外レース、すごくいい経験でした!フアヒネ島で数多く並ぶのカヌーを見た時、最高に気分が上がりました。そして、タヒチの綺麗な海を漕ぐことができとても幸せでした!
メンバー、大会に送り出して頂いたクラブの皆様、そして応援していただいた全ての人に感謝してます! ありがとうございました!

有賀 勇人
私にとって初めての海外レースでした。未知の国、未知の海峡、未知のレース。どれもわからないことだらけでしたが、色んな方々にサポートをして頂き、とても有意義で素晴らしい経験になりました!
これで終わりにする事なく、今回の経験をもとに、またもう一度チャレンジしたいと思います!

金井 正道
タヒチの海の美しさとタヒチアンのホスピタリティに感動しました。
レースだけでなく、レースに向かうまでに過ごした数か月間も貴重な時間となりました。
レースに誘ってくれたコーチ、受け入れてくれたメンバー、サポートしてくれた皆様へ感謝します。

柏木 星詩
アウトリガーカヌーをはじめ、ハワイやタヒチへの憧れがあった。その想いから始まったV1でのタヒチへの挑戦は、自分自身の人生に深く刻まれる豊かな時間だった。俊くんやJAKEとも一緒にチャレンジしたよね。懐かしいね。
しかしながらコロナや仕事環境の変化など、ここ数年は苦しい時を過ごしていた。
そんな時に、今回のタヒチへのお話をいただいた。
『VAA』アウトリガーカヌーを漕いでいる人にとって、ハワイキヌイバァという存在はどこか夢のような話だと思う。その夢に挑戦できることは、少し畏まった言い方だけど、神様からのギフトを賜ったのだと感じている。語れば長くなるし、ここでは多くは語れないけれど、僕にとって今回の出来事は人生でただ一度きりの挑戦であると感じていた。そんな自分の人生一度きりの出来事の中で一緒に漕いでくれたみんな、そして関わってくれた皆さんに、感謝の言葉では伝えきれないくらいの深い感謝を伝えたい。良いことも悪いことも、いろんなことが起きる。でも、間違いのないことは、この夢のような旅はいつか死ぬ時に自分を誇れる出来事の一つだよね。ありがとうございます。